Cat

実家には21年生きた猫がいました

 

大学を卒業した年の6月

風呂無し1DK家賃3万5千円也の画室を実家から5分の場所に借りていた私は

夕食を食べるために小雨降る中を自転車を走らせて家へと向かっていました

すると何処からか、細く小さな、消え入りそうな声が聞こえて来ました

気になって自転車を止め探してみると

声の主はぐっしょりと濡れたダンボールの中にちょこん

と座って私を見上げていたのでした

 

生まれて数日だったのでしょうか

みーみーと鳴いていたのは

きょろんとした目の

白に焦げ茶のブチ模様の可愛いらしい子猫でした

 

実家はペット禁止の団地でしたが

雨降る中とても見捨ててはおけず

考える間もなく子猫を胸に抱き連れ帰ったのでした

 

最初は反対した父母も実は根っからの猫好き

放り出すはずもなく

「ちび」と名付けられた小さな猫はやがて5キロ越えのデブ猫に成長し

甘やかされ可愛がられ

21年もの長きに渡り野放図にのびのびとその生を全うしたのでした

 

「孫だと思って」と父母に託したちびは

本当に父母の心の支えであったと思います

 

今でも実家に帰ると

ちびの気配を感じることがあります

そして今は一人暮らしの年老いた父の傍に

そっと寄り添っているような気がするのでした

 

ちび、ありがとね

 

というわけで

猫を描く時はいつでも頭の片隅に

ちびの姿があるように思います